2005年05月16日
「テロリストは殺せ」――Shoot To Kill
イラク,アンバール州(ラマディ,ファルージャなどを含む)一帯で現在進行中のオペレーション・マタドール。この「作戦」については,5月10日のガーディアン掲載記事(クレジットはAgenciesなので通信社の配信記事だろう)を日本語にした。記事全体においてこの「作戦」(アル=カーイムへの攻撃)のことが書かれている部分はそんなに大きくはない。しかし,NYTが報じた米軍の発表――使用した兵器の詳細が書かれている。いわく,レーザー誘導500ポンド爆弾2つを投下、また20ミリ砲弾を510発発射し、海兵隊のF/A-18戦闘機が20ミリ砲弾を319発発射と。
こういう記述を見ると,既視感に襲われる。こういう記述は,「ファルージャへの攻撃の任意の1日」とほとんど違わない――2004年9月と10月の,「包囲攻撃の準備段階」と米軍によって称されていた,なおかつ何らかの最終目的をおそらく有しており,それにむけて連続していた攻撃のころのものと。
9月,10月を経て,11月のあのファルージャ破壊の理由をご記憶の方もおられると思う。「ザルカウィが潜伏しているから」だ。
本当にファルージャにザルカウィがいたのかどうかすらわからない。なおかつ,11月の「総攻撃」は行なわれ,そのときには既にザルカウィはファルージャからいなくなっていた――あの破壊は何のためだったのか,という疑問は,あちこちのウェブログなどで見た。
でも,「いもしないザルカウィを狙って破壊が行なわれた」ことより,「ザルカウィを殺そうとした」ことの方が本質的には重大な問題じゃないのかと――「殺す」のではなく「身柄を押さえて法の裁きを受けさせる」のが,法ってものじゃないのかと,こんな「法」なんてものがすっかり無力化させられ,まもなく有名無実化させられるかもしれない日々の情報洪水(「洪水」というより「鉄砲水」だね,一方的に押し寄せてくる)の中で,激しく疑問に思っているわけだ。
そしてこの,「とらえるのではなく殺す」というポリシーは,私の中では「英国がやってきたこと」でもある――北アイルランド。
こういう記述を見ると,既視感に襲われる。こういう記述は,「ファルージャへの攻撃の任意の1日」とほとんど違わない――2004年9月と10月の,「包囲攻撃の準備段階」と米軍によって称されていた,なおかつ何らかの最終目的をおそらく有しており,それにむけて連続していた攻撃のころのものと。
9月,10月を経て,11月のあのファルージャ破壊の理由をご記憶の方もおられると思う。「ザルカウィが潜伏しているから」だ。
本当にファルージャにザルカウィがいたのかどうかすらわからない。なおかつ,11月の「総攻撃」は行なわれ,そのときには既にザルカウィはファルージャからいなくなっていた――あの破壊は何のためだったのか,という疑問は,あちこちのウェブログなどで見た。
でも,「いもしないザルカウィを狙って破壊が行なわれた」ことより,「ザルカウィを殺そうとした」ことの方が本質的には重大な問題じゃないのかと――「殺す」のではなく「身柄を押さえて法の裁きを受けさせる」のが,法ってものじゃないのかと,こんな「法」なんてものがすっかり無力化させられ,まもなく有名無実化させられるかもしれない日々の情報洪水(「洪水」というより「鉄砲水」だね,一方的に押し寄せてくる)の中で,激しく疑問に思っているわけだ。
そしてこの,「とらえるのではなく殺す」というポリシーは,私の中では「英国がやってきたこと」でもある――北アイルランド。
「オペレーション・マタドール」を報じるガーディアン掲載記事には,この作戦の目的は,「ザルカウィを狩るために(in the hunt for the Jordanian militant leader Abu Musab al-Zarqawi)」なのだと書かれている――huntというのは,つまり,dead or aliveってことだ。そして,米軍が「ザルカウィ本人」を目的としているのか,あるいは「ザルカウィの組織」なのか「ザルカウィの支持者たち」なのか,厳密なところは私にはわからない。(ファルージャのときも,こういった配信記事では「ザルカウィの隠れ家」と「ザルカウィの支持者の拠点」との区別がつかないことが極めて多かった。)
また,米軍が「ザルカウィ本人」をどうすることを目的としているのかもわからない――いや,わかってるんだけど。通常であれば「身柄の拘束」だろうが,米軍はこの身柄拘束のほかに,「殺害」を目的として「作戦」を行なう。
というか,「殺害」を目的とするのでなければ,「隠れ家を見つけたのでミサイルを撃ちました」はあり得ない。まさに英国のIRAに対するshoot to killの,さらにグロテスクな子ども。
shoot to kill――翻訳など不要なくらいに平明な3語。平明すぎてわからないかもしれない。「殺すために撃つ」だ。負傷させるためではない。身体の自由を奪って拘束しやすくするためではない。「殺す」ことを目的として撃つ。
文字にすると,まるでスパイもののアクション映画の安っぽいプロットの一部分のようにも見えるが,Shoot To Killはフィクションではない。北アイルランドで,英軍が実際に行なってきたことである。
暗殺/殺害されたのは,IRAメンバー(=「テロリスト」),シン・フェイン党員(暗殺および暗殺未遂のリスト:ターゲットの自宅にいる妻子がやられたことも一度や二度ではない),リパブリカン運動支持者など,300人以上。
重要なのは,英国が北アイルランドでShoot To Killを行なっていたのは,遠い昔ではない,ということである――the Troublesの時代,すなわち1969年から1993年*1。
現在の英国の政治家たちは,年齢から考えて,例外なく,この時期のことを知っている。あるいは記憶している。あるいは当事者だった。
話を強引にイラクに持っていく。
2004年11月,ファルージャ総攻撃のとき,メインストリームの報道では,「ザルカウィの隠れ家」という表現が「ザルカウィの支持者(追随者)の隠れ家」と区別なく用いられていたことは1回や2回ではない。そして,「ザルカウィの支持者」は「反乱者 insurgents」と同義としてメディアでは扱われ,「テロリスト」という言葉を使うことになんらの躊躇を覚えない人々は,彼らを「テロリスト」と呼ぶ。
北アイルランドで何者かに(おそらくはSASだろうが)殺害されたリパブリカンがいる。その人物は法律家で,いきなり身柄拘束されて監獄に送られ拷問を受けたような人たちの訴訟に関わっていた。彼のことを,反リパブリカンの側の一部の連中は,「テロリスト」だと主張する。その法律家は武器など手にしていないのに,「奴らのcauseをサポートした」から「テロリスト」なのだという。
デジャヴ。
それでも少しだけ,英国の,法の外側で自身を特権化したこのポリシーを擁護してみることにしよう――IRAに対するshoot to killのポリシーは,標的を正確にアイデンティファイし,その標的をのみ狙って,正確に暗殺する(事実上は「処刑する」)ものであり,その人物がいた街を丸ごと破壊することはなかった。
標的を撃つツールとして,狙撃するためのライフルは用いられたが,戦闘機に搭載された500ポンド爆弾は用いられなかった。
それはただ単に,「英国内で英軍が爆弾を落とす」などということが選択肢にもなってなかったからであろう。けれどもそれは,今になってみれば,何と「人道的」なことか。(You know, I'm being sarcastic!)
ジブラルタル(イベリア半島にあるが,英領。1713年のユトレヒト条約参照)で「自動車爆弾を仕掛けたIRAメンバー3人」が(実は自動車爆弾など現場からは発見されなかったのだが)射殺されたとき,英国はジブラルタルに軍を送ってその街を封鎖し破壊しはしなかった。
こんなことで「英国はまし」と思う,私は異常だ。
そうだろう?
---------------------------------------------
*1:
なお,このポリシーが実行されていたときの英国の与党は,保守党だった時期もあれば労働党だった時期もある。「労働党は左派だからパシフィスト」というあまりに単純にすぎる認識は,ブレアのイラク戦争で完全になくなっていると思うが,ブレアがいてもいなくても,イラク戦争があってもなくても,労働党は左派だが,パシフィストなどでははなからない。労働党内のanti-warの国会議員らは,労働党だからanti-warなのではなく,anti-warだからanti-warなのである。(そして彼らのanti-warの根拠は,さまざまである。)
また,米軍が「ザルカウィ本人」をどうすることを目的としているのかもわからない――いや,わかってるんだけど。通常であれば「身柄の拘束」だろうが,米軍はこの身柄拘束のほかに,「殺害」を目的として「作戦」を行なう。
というか,「殺害」を目的とするのでなければ,「隠れ家を見つけたのでミサイルを撃ちました」はあり得ない。まさに英国のIRAに対するshoot to killの,さらにグロテスクな子ども。
shoot to kill――翻訳など不要なくらいに平明な3語。平明すぎてわからないかもしれない。「殺すために撃つ」だ。負傷させるためではない。身体の自由を奪って拘束しやすくするためではない。「殺す」ことを目的として撃つ。
文字にすると,まるでスパイもののアクション映画の安っぽいプロットの一部分のようにも見えるが,Shoot To Killはフィクションではない。北アイルランドで,英軍が実際に行なってきたことである。
"Shoot-To-Kill" is a covert strategy of assassination of targeted unarmed Republican supporters, of active or inactive IRA personnel, or the killing of combatants without the chance of surrender or during the act of surrender, in other words, "summary execution".
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As a result of this policy, over 300 individuals, more than half civilians unassociated with the IRA or the broader republican movement, have been killed by British crown forces in the North since 1969.
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-- source
暗殺/殺害されたのは,IRAメンバー(=「テロリスト」),シン・フェイン党員(暗殺および暗殺未遂のリスト:ターゲットの自宅にいる妻子がやられたことも一度や二度ではない),リパブリカン運動支持者など,300人以上。
重要なのは,英国が北アイルランドでShoot To Killを行なっていたのは,遠い昔ではない,ということである――the Troublesの時代,すなわち1969年から1993年*1。
現在の英国の政治家たちは,年齢から考えて,例外なく,この時期のことを知っている。あるいは記憶している。あるいは当事者だった。
話を強引にイラクに持っていく。
2004年11月,ファルージャ総攻撃のとき,メインストリームの報道では,「ザルカウィの隠れ家」という表現が「ザルカウィの支持者(追随者)の隠れ家」と区別なく用いられていたことは1回や2回ではない。そして,「ザルカウィの支持者」は「反乱者 insurgents」と同義としてメディアでは扱われ,「テロリスト」という言葉を使うことになんらの躊躇を覚えない人々は,彼らを「テロリスト」と呼ぶ。
北アイルランドで何者かに(おそらくはSASだろうが)殺害されたリパブリカンがいる。その人物は法律家で,いきなり身柄拘束されて監獄に送られ拷問を受けたような人たちの訴訟に関わっていた。彼のことを,反リパブリカンの側の一部の連中は,「テロリスト」だと主張する。その法律家は武器など手にしていないのに,「奴らのcauseをサポートした」から「テロリスト」なのだという。
デジャヴ。
それでも少しだけ,英国の,法の外側で自身を特権化したこのポリシーを擁護してみることにしよう――IRAに対するshoot to killのポリシーは,標的を正確にアイデンティファイし,その標的をのみ狙って,正確に暗殺する(事実上は「処刑する」)ものであり,その人物がいた街を丸ごと破壊することはなかった。
標的を撃つツールとして,狙撃するためのライフルは用いられたが,戦闘機に搭載された500ポンド爆弾は用いられなかった。
それはただ単に,「英国内で英軍が爆弾を落とす」などということが選択肢にもなってなかったからであろう。けれどもそれは,今になってみれば,何と「人道的」なことか。(You know, I'm being sarcastic!)
ジブラルタル(イベリア半島にあるが,英領。1713年のユトレヒト条約参照)で「自動車爆弾を仕掛けたIRAメンバー3人」が(実は自動車爆弾など現場からは発見されなかったのだが)射殺されたとき,英国はジブラルタルに軍を送ってその街を封鎖し破壊しはしなかった。
こんなことで「英国はまし」と思う,私は異常だ。
そうだろう?
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*1:
なお,このポリシーが実行されていたときの英国の与党は,保守党だった時期もあれば労働党だった時期もある。「労働党は左派だからパシフィスト」というあまりに単純にすぎる認識は,ブレアのイラク戦争で完全になくなっていると思うが,ブレアがいてもいなくても,イラク戦争があってもなくても,労働党は左派だが,パシフィストなどでははなからない。労働党内のanti-warの国会議員らは,労働党だからanti-warなのではなく,anti-warだからanti-warなのである。(そして彼らのanti-warの根拠は,さまざまである。)
Posted by nofrills at 12:36
│i_dont_think_i_am_a_pacifist/words_at_war
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